The story of ALETHIUM
なぜ、いま、
人事のSoRを再発明するのか。
SoR(System of Record)とは、人と組織の「正しい記録」の源泉となる基盤のことです。いまの技術で、AIがいることを前提に、そのSoRを一から設計したらどうなるか。ALETHIUM™は、その問いへの答えです。五つの幕で、問題の根から未来までをたどります。
Act I — The problem
これまでのSoRの限界:
記録はあるが、真実が見えない。
人事のSoRは、給与を払い、組織を形づくり、法令を守るための、会社でいちばん「正しくなければならない」システムです。それなのに現場では、同じ問いが繰り返されています。あの月の時点で、正しい等級はどれだったのか。なぜこの人の手当はこの額なのか。法改正に、いつ対応できるのか。
答えを出しているのは、多くの場合システムではなく人です。表計算の別台帳、詳しい担当者の記憶、過去のメール。SoRは「正しさの源泉」ではなく、「正しさを人が補う場所」になっています。
根本原因は明確。これまでのSoRは、「今の値をしまう箱」として作られてきたから。
箱の中では、性質の違う三つのものが混ざっています。事実は新しい値で上書きされ、過去にどう認識していたかが失われる。ルールはプログラムに埋め込まれ、法改正や規程の変更がそのまま改修の案件になる。そして判断は、誰が何を根拠に決めたかがシステムの外に散らばる。
AIを載せても、根は変わらない
この箱の上に、AIの対話画面を被せる試みが増えています。入り口は便利になるでしょう。しかし、上書きされた過去はAIにも取り戻せない。根拠のない数字はAIにも説明できない。プログラムに埋まったルールには、AIは触れられない。
AIに本当に働いてもらうには、AIが働ける地盤から作り直すしかありません。必要なのは「AIを足したSoR」ではなく、「AIを前提に設計したSoR」です。
Act II — The idea
真実とは、
忘れず、隠さないこと。
ギリシャ語で真実を意味する ἀλήθεια(aletheia)は、否定の a- と、忘却・覆い隠すことを意味する lēthē からできた言葉だとされます。真実とは、もともと「忘れられていない」「覆われていない」状態のことでした。
ALETHIUMは、この語源をそのまま設計の約束にしました。
- 忘れないすべての事実を、「いつ有効か」と「いつ記録したか」の二つの時間とともに積み重ねる。上書きも削除もせず、訂正も追記で表す。
- 隠さないすべての金額に、どの入力・どのルールの版・どの料率表の版から生まれたかを添える。誰が提案し、誰がいつ承認したかも残す。
分ける。だから、噛み合う。
この約束を守るために、箱の中で混ざっていたものを分けました。事実は時間付きで追記する。ルールはプログラムではなく、版の付いたデータで持つ。判定(計算・権限・承認ルート)は、同じ入力なら必ず同じ結果を返すエンジンが行う。AIは提案し、説明し、異変に先に気づく。そして人が承認する。
AIに判断を任せるのではありません。AIが提案し、人が承認する流れを、すべての操作の標準の形にする。それがALETHIUMの考える「AIネイティブ」です。役割が分かれているから、それぞれを確かめられ、全体が矛盾なく噛み合う。私たちはこれを Coherence と呼んでいます。
AI proposes. Rules decide. People approve.
Act III — The fabric
真実を織る、
六つの仕組み。
1. 二つの時間で、すべてを記録する
社員・所属・給与の条件・料率表・権限・設定まで、例外なく「有効期間」と「記録の時刻」を持ちます。さかのぼる訂正も、来期の組織変更の予約も、確定後の修正も、同じ表の上で矛盾なく並びます。画面では「あの時点の、あの時に知っていた姿」に切り替えて確かめられます。
2. 1円まで、根拠をたどれる
給与の計算は、外の状態に左右されない純粋な関数として作られています。同じ入力からは必ず同じ結果が出るので、結果を何度でも再現し、検証できます。すべての金額には根拠の記録が付き、「なぜこの額か」にその場で答えられます。AIは説明文を書く手伝いはしますが、計算そのものはしません。
3. コアは、どの国でも変わらない
人・組織・ポジション・時間・権限・根拠といった共通のコアの上に、国のパック、会社のパック、報酬のパックを重ねます。会社固有の事情はデータとして書き、エンジン本体は分岐させません。新しい国への展開も、制度の変更も、作り直しではなくパックの追加と差し替えになります。
4. 法改正に、改修待ちはいらない
公表される法令や料率を見張るエージェントが、変更をルールパックへの差分とテストの形で用意します。人が中身を確かめて承認し、公開します。「ベンダーの改修を待つ」から「届いた提案を確かめる」へ、法対応の形を変えます。
5. 意図を述べれば、提案が届く
人もAIエージェントも、同じ権限の仕組み・同じ監査の記録・同じ承認の流れで動きます。意図を述べると、AIが提案を組み立て、影響をプレビューで示し、人が承認すると記録される。二重の支払いや、残ったままの権限のような異変は、起きる前に見つけて知らせます。
6. 安全は、あとから足さない
会社どうしのデータの分離は、アプリの条件分岐ではなく、データベースの行単位で強制します。履歴書や契約書は暗号化して保管し、見たことも記録に残します。信頼は、あとから足すものではなく、土台の性質として持たせています。
Act IV — What it enables
真実が、
次の一手になる。
証明してから、切り替える
SoRの乗り換えで最も怖いのは、「新しいシステムが本当に同じ結果を出すのか」が、切り替えるまで分からないことです。ALETHIUMは、旧システムのデータを取りこぼさず預かり、過去の給与を同じエンジンで計算し直し、社員 × 月 × 項目で突き合わせます。差は端数・設定漏れ・手修正などの理由ごとに分けて示し、残る差をすべて説明できた状態で切り替えます。運命に委ねて移るのではなく、証明して移る。
設定作業そのものを、なくす
過去の給与明細と社内規程から、給与の体系・手当・端数の処理を推定し、ルールの案を作って過去の実績で確かめる。反対に、設定から規程の条文を作り、原本との違いを示す。規程とシステムが同じ真実を指している状態をめざします。
組織改編を、その場で試す
異動、組織の改編、報酬の改定、規程の変更。案を本番と同じ計算で全社員に当て、給与や承認ルートがどう変わるかを差で示します。記録は一切変えずに何度でも試せるので、勘や経験ではなく、事実に基づいて決められます。
人とAIが混ざる組織へ
これからの組織では、AIエージェントも仕事の担い手になります。ALETHIUMは、AIエージェントを人と同じ権限の主体として扱うところから始めました。その先には、AIもポジションに就き、コストと管理ラインの対象になり、人とAIを合わせた組織の姿を同じ記録の上で見られる未来を描いています。
Act V — Open by design
閉じない。
真実の源泉に徹する。
ALETHIUMは、すべての業務を一つの製品に抱え込むことをめざしていません。人と組織の真実を、開かれたAPI・MCP・SCIM・Webhookという接続の約束で外へ渡し、ほかのプロダクトが差し込める土台になります。人・組織・ポジションの意味を定めた共通の意味モデル(オントロジー)を持つので、人もAIも、同じ言葉で組織について考えられます。
スキルとジョブの知性を担う EKALLIUM™ と結びつけば、能力の帳簿と、報酬・配属の確かな記録が重なります。「どんな能力に、どれだけ投資し、何が生まれたか」という人的資本の損益が、初めて同じ土台の上で見えるようになります。
さらにその先に、国ごとのルールのパックを、専門家が確かめ、改善し合える開かれた形で共有する構想があります。法令への対応を一社ごとの負担から、皆で支える共通の基盤へ変えたいと考えています。
いま、どこまで来ているか
真実を掲げる以上、できていることと、これからのことを分けて書きます。以下は合成データだけのデモ環境での状況です。「一部実現」の横の目盛りは進み具合の目安で、1 が入口まで、2 が半分ほど、3 が大半(残りは周辺の部分)です。
| Capability | Status | Note |
|---|---|---|
| 二つの時間での記録と、時点の再現 | 実現 | 時点の考え方が当てはまる画面で切り替えられる |
| 全金額の根拠の記録 | 実現 | 入力・ルールの版・料率表の版 |
| コアと国のパックの分離 | 実現 | コアが国を名指しせず、国のパックを架空の国に差し替えても動くことを、検査で確かめている |
| 国のパック | 一部実現 | 日本は一通り。米国は連邦と一部の州・市、英国は基本の給与まで。ほかの州・国はこれから |
| 法改正の見張り | 一部実現 | 見張りと差分の提案まで。影響の分析・検証・会社ごとのプレビューはこれから |
| 証明付きの移行 | 一部実現 | 道具と、架空の旧システムでの証明レポートまで。実データでの検証はこれから |
| 推論による導入・規程の条文の生成 | 一部実現 | 日本の月給・月末締めの給与明細から推定。条文は賃金規程・就業規則の該当の条まで。ほかの国・賃金体系はこれから |
| 組織改編・報酬改定の試算 | 一部実現 | 本番と同じ計算で、記録を変えずに全社員の差を見られる。ブラウザでのその場の試算、大規模な会社の長い処理はこれから |
| 要員計画(予算・空席・採用枠) | 実現 | 組織 × 職種 × 年度の計画の人数と人件費を、在籍・空席・採用予定と並べ、予算超過に印(第 1 段) |
| 権限の棚卸し | 実現 | 過剰・残存の権限を見つけて外す提案。外部の ID 基盤側の権限は対象外 |
| 日本の法定帳票 | 一部実現 | 給与明細・賃金台帳・源泉徴収票・全銀・会計の仕訳・年金事務所の届出ファイルまで。電子申請での送信や一部の届出はこれから |
| メールからの承認 | 一部実現 | 承認待ちのお知らせと、メールのリンクからの承認。Slack・Teams からの承認はこれから |
| 人とAIの混成組織 | 構想 | 権限の主体としては実現。ポジション・コスト配賦はこれから |
| EKALLIUMとの接続 | 構想 | 接続の約束(SCIM など)は用意済み。当面は接続しない方針 |
| ルールのパックの開かれた共有 | 構想 | 署名つきで公開する仕組みはこれから |